2019年8月27日火曜日

3

・ようやく梅雨が明けたと思えば、もう秋を感じさせる今日この頃。先月は愚痴ばかりになってしまったので、今回は工作に関する話題を。

・プラモデルなどのディスプレイモデルはさておき、鉄道模型はレールから集電したりする事で自走する模型だ。ともすれば「意のままに走る」のは当然であって然るべきだが、中々うまく行かなかったりする。例えば集電不良で止まってしまったり、レールに段差が生じていて脱線してしまったり、そもそもレールと車輪の規格が合致していない事さえある。

・今回は、この中でも集電不良、車両側で出来る対策について考えてみたいと思う。
・私の手がけた車両のなかに、カトーの16番クモハ12がある。ボギーの台車からは全輪集電されており、台車の追従性も高く、車輪は厚めだが、DCC化していることも相まってか、非常に良く走る。基本的には製品のそのままなのだが、デコーダーなどを搭載する都合でウェイトを撤去している。つまり、このモデルにおいて、捕重は集電不良対策としてほとんど効果が無い事を証明している。軽くても、台車の追従性が良ければ問題は起きないらしい。
・もう一点、手元にあるモデルからエコーモデルのDC20も紹介しよう。3軸固定のC型ロッド式DLで、車輪はいわゆる片側絶縁、絶縁側には踏面にエッチング抜きの燐青銅の集電ブラシを当てる事で集電している。駆動に関しては第2軸にギヤがかかっており、前後の動輪はロッド連動となっている。そこに、個人的な改良として、DCC化のためのデコーダーと、そのデコーダーに対応しているスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)も搭載する事で、少しの無通電区間なら走り続けるよう改良した。その結果、よほどレールが汚れているわけでも無い限りは止まる事も無く、これまた集電不良知らずな車両になった。このモデルもウェイトは搭載していないから、捕重はもちろん、固定軸の可動化ばかりが対策では無い事を証明していると思う。「踏面よりも車輪裏側にブラシを当てるべきだ」という意見もよく耳にするが、これに関してもどうやら踏面摺動でさほど問題は無いらしい。個人的には、当てる場所よりも接触圧力の調整が大事であるように感じる。
・これらの結果から、HO程度の大きさであれば、イコライザなどを組み込むだけが解決法ではないと言えるのではないかと思う。コンデンサの増設であれば、電子工作のハンダ付けが出来れば可能だし、精度の高い工作が必要なイコライザ組み込みよりもずっと手軽だと思う。

・集電不良対策としてDCC対応スーパーキャパシタ製品の例を挙げたが、もちろん万全の対策とは言えない。なぜなら、スーパーキャパシタをはじめ、全てのコンデンサは充放電を繰り返す事によって劣化し、いずれは機能を果たせなくなるからだ。恒久的なモデルを目指すなら、交換が容易な構造とするべきだろう。また、スーパーキャパシタなら問題ないが、一般的な電解コンデンサは極性の向きが決まっている他、耐電圧にも十分に注意したい。使用方法を誤ると急速に劣化が進行したり、最悪の場合破裂する。コンデンサは集電不良対策として有効な手段だが、用いる際には十分に勉強したうえで特性を熟知してから使用したい。自信がなければ、市販の製品を利用するのが間違い無いだろう。

(追記)信頼できる方より、コンデンサは充放電の電解液揮発よりも、封止ゴムの劣化で寿命を迎えるケースが多く、現代の製品では電解液も封止ゴムも改良されて20年前の製品と比較して寿命が延びているとのコメントを頂いた。コンデンサの寿命に関しては、あまり考慮しなくても良さそうだ。

・ここまでは1両だけで走ることを前提としていたが、そうで無い場合、俗に言うところの編成ものであれば、車間をジャンパして引き通し集電化するのも有効的な手段だ。博物館に展示される模型は多くの場合はこの手法で集電力を強化している事からも、その効果の高さが伺える。
・博物館模型の場合は、個人の模型と違い出したら収納する必要は無いため、確実さの面からもリード線がコネクタないしビス留めされていて、リード線は貫通路を通り抜けている。しかし、個人の作品の場合、ホームレイアウトに置きっぱなしに出来るのであればともかく、そうで無い場合は容易に切り離せる構造が望ましく、さらにリアリティを追求するのであれば、リード線が車内を這って貫通路を通り抜けているのは興ざめする向きもあると思う。
・こうなると通電カプラーが現実的な解決策となる。幸いにして、日本ではIMONからビスで簡単に取り付けることができる通電カプラーが発売されている。伸縮を確保しつつ通電し、上下も自由に可動する優れものだが、1点だけ大きな落とし穴がある。導電部分の黒染め処理の接触抵抗が非常に大きいのだ。具体的には1枚の皮膜で100〜150Ω、接触する部分は2枚の皮膜となるので最大で300Ωほどの抵抗になってしまう。これでは通電カプラーとしての機能を果たさない。
・この黒染め皮膜はサンポールをはじめとした酸性の液体に漬けることで剥がすことが出来るので、使用前に皮膜を取っておくことをオススメしたい。

・今月は大きなイベントとして鉄道模型コンテストとJAMが開催された。これに関する雑感は来月まとめたいと思う。